映画「メッセージ」あらすじ

突然、世界各地に謎の巨大物体が現れる。
言語学者ルイーズ・バンクスは、米軍将校から不思議な音声を聞かされ、
「何を言っているかわかるか?」
と問われる。
政府は、巨大な物体の中にいる地球外生命体とコミュニケーションを取れる人材を探していたのだ。
未知を解き明かす計画に魅了され、参加を決めるルイーズだが、現場の異様さは想像を絶していた。
宇宙船と思われる物体の中では、地球とは違う方向に重力が働き、その奥底に蠢く地球外生命体は、人間の恐怖を誘う多脚の巨大生物だった。
7つの突起を持つ彼らはヘプタポッドと呼ばれ、世界各地で同様のコミュニケーションが試みられていたが、誰一人成功していなかった。
ルイーズは彼らにも自分たちと同じような一人称があるのではと考え、まず自ら防護服を脱いで姿を曝し、ホワイトボードに「ルイーズ」「人間」と描き、対話をはじめる。
そこにいた二体のヘプタポッドは、墨のような体液で模様を描きながら、唸り声を発した。
ルイーズと同僚の物理学者イアン・ドネリーは、宇宙では普遍的であるはずの数学や物理学の公式も交え、少しずつ会話を重ねることで、彼らの文法を学んでいく。
その一方でルイーズは、不思議な幻覚に苦しむようになる。
未婚の自分に娘がいて、その子が病に倒れる、というものだ。
精神的に追い詰められていく彼女に、さらなる試練が課せられる。
それはヘプタポッドの来訪の目的だった。
彼らは「人類に〈道具〉を与えに来た」と伝えたのだ。
〈道具〉を〈武器〉であると解釈した中国軍は、世界中につながっていた地球外生命体の言語翻訳用ネットワークを切断。
ヘプタポッドを侵略者とみなして攻撃をはじめてしまう。
単身、宇宙船に向かったルイーズは、ヘプタポッドたちから重要なメッセージを与えられる。
彼らは人類とは違う時間を生きていた。
そして遠い未来、彼らが危機に瀕した時、人類が救いの手を差し伸べる。
そのための〈道具〉つまり、過去にも未来にも双方向につながる認識を得られる、彼らの〈言語〉を持って、地球を訪れたのだ。
ルイーズはイアンの助けを得て、中国軍の指揮官シャン将軍に連絡する。
そして、未来に催される、地球の恒久的平和を祝うパーティーで教えられる、彼の妻の末期の言葉を告げ、全面戦争を回避する。
地球人たちが争いを止めたと同時にヘプタポッドたちの船は空へ還っていく。
イアンは、誰よりも勇敢に行動し、攻撃を喰い止めたルイーズを愛しはじめていた。
「結婚してくれるかい?」
ルイーズの脳裏に、未来の、イアンとの諍いや、娘の発病、そして死、などの光景が流れていく。
そして同時に、これからはじまる、二人が愛しあう日々の幸福や、娘が生まれた日の〈記憶〉が、拡がっていく。
ルイーズはイアンを見つめ、結婚を承諾した。

映画「メッセージ」感想

『メッセージ』はSF文学賞としては最高峰と言えるネビュラ賞、スタージョン賞をダブル受賞した、テッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』を映画化したもの。
SFファンの期待が非常に高かった半面、スカッとする宇宙活劇が見たかった層にはまったく響かなかったようです。
言語構造を認識することは、その言語を使っている種族の意識を学習することであるとか、時間の流れは一方向ではないとか、SFファンにはお馴染みの概念が、こんなにもマイナーだったのか……と逆にびっくりしました。
テッド・チャンが好きで映画館まで行ったファンからすると、原作短編を拡げるためなのか、資本を獲得するためなのか、やたら出てくる中国軍の描写が冗長に感じてしまいますし、ヘプタポッドの文字もそれぞれのファンの中で出来上がっていた“たぶんこういう感じ”というイメージを、原作者が中国系だから、とメチャクチャ漢字っぽく作ってしまったことにションボリしてしまいます。
活字を映像化するって、ものすごく大変なんですね。
ただ、それらを差し引いても、素晴らしい映画でした。
ヘプタポッドの言語は音で表される部分と文字で表される部分があるんですが、この音の方が、確かにこの地球上では聞いたことのないような響き。
さすがアカデミー賞の音響部門を獲っただけあります。
草原に佇むヘプタポッドの宇宙船の斬新なフォルム、地球外生命体とのファーストコンタクトに臨む人々の踏む複雑な手順など、いきなり宇宙空間から知らない惑星に降りてしまう某SFとか、同じ重力下で生きられそうもない生命体を面白おかしく造形する某SFなんかを見て、頭を抱えて映画館から出てくるタイプの皆さんにはたまらないはずです。
ラストシーンのルイーズの選択には、涙さえ出てしまいます。
邦題になっている『メッセージ』も、映画版の原題である『アライバル』も、この映画には合っていません。
これはもう、短編集を訳した浅倉久志氏の、『あなたの人生の物語』がダントツの勝利です。
このタイトルだからこそ、ルイーズがなぜ、悲しみが待っているとわかっている結婚を受けるかが生きてくるんです。
邦題に『Story of Your Life』が使えないなら、『あなたの人生の物語』で良かったと思います。
なぜ、メッセージなんていう、印象の薄~いタイトルをつけてしまったのか?
日本での公開だけがものすごく遅れたことも、とても残念でした。
良い映画なのに、先に海外の映画ファンからストーリー全部流されて、しかもそのストーリー解説がサピア・ウォーフ仮説もフェルマーの定理もまったくわかってない方々のものがメインで、ガッカリして観に行かなかったSFファンがいっぱいいました……。
とにかく観てほしいですし、見終わったら『あなたの人生の物語』を読んでみてほしいです。
これから結婚しようかな、と思っている人には、彼、彼女と感想をシェアすることをおすすめします。
そのくらい、人の生きる意味や、愛について、問いかける内容の、深~い映画でした。